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アトリエ写真講座第二回目・・・フィルムに関する質問(続編)

埼玉県在住Kさんからのお便り

前略ごめんください。
アトリエ写真講座第一回目を拝見しました。フィルムに関して、続きの質問があります。アトリエフォトブックを作る上で最も適しているフィルムは何でしょうか?これから写真集を作るための写真撮影を行う予定であり、事前に知っておきたいと思っています。よろしくお願いします。

敬具

アスカネットスタッフの回答

お便りいただきましてありがとうございます。下記に回答申し上げます。
フィルムにはいろいろな種類がありますね。サイズで分けると35mm、ブローニー、4×5(シノゴ)などになりますが、どのサイズでもデジタルデータへのスキャニングが可能で、もちろんアトリエフォトブックの制作も可能です。

一般に普及しているサイズとしては圧倒的に35mmが多いと思いますが、写真愛好者になるとブローニーサイズで作品作りをしている方も多いようです。少数派ではありますが、4×5による大型カメラ撮影を趣味にしてる方もいらっしゃいます。 以下にそれぞれのフィルムサイズの特徴を記載しますので、ご参考ください。

 

【35mm】
一般に普及しているのが35mmサイズです。元々は映画撮影用のフィルムを流用したもので、カメラメーカーのライカ社が採用したことから、スチール撮影用として世界的に普及したものです。1コマの大きさが 36×24mm になり、これは別名「ライカ版」と呼ばれています。

ライカ版

1940年以降に生産された
LeicaVcモデル


ライカの初期モデルが発売された当時(1920年頃)は撮影者が自ら暗室で長いフィルムを切り、マガジンに詰めてからカメラにセットしていました。これは面倒ですね。装填に失敗することもしばしばで、フィルムが感光してしまうこと多かったわけです。そこで、ドイツ・コダック社が一工夫しました。1934年に「レチナ」というカメラを発売し、このカメラ用にパトローネと呼ばれるマガジンに35mmフィルムを予め詰めて同時に発売したところ、ヒット商品となりました。フィルムがパトローネにセットされて売られていますから、パトローネごとカメラにセットすれば失敗が極めて少なくなります。現在の35mmフィルムは、レチナでのアイデアが世界的に普及したものです。この規格は別名「135」とも言います。


1954〜1958年生産のモデル

 

【ブローニーサイズ】
フィルム幅が約6cmのロールフィルムで、コダック社の規格では「120」「127」などと呼ばれています。「120」フィルムは、フィルム幅61.5mm、長さ830mmでパーフォレーション(送り穴)無しのロールフィルムのことで、プロのモデル撮影や商品撮影からアマチュア愛好家の風景撮影など幅広く使われました。
このフィルムは画角のフォーマットが多く、6×4.5cm、6×6cm、6×7cm、6×8cm、6×9cm、6×12cmなどのカメラが存在しました。
コダック社が1900年に発売した「ブローニーNo.1」というカメラでは当初「117」という6×6cm判で6枚撮り用ロールフィルムを使っていましたが、すぐに「120」に変更になって、これが日本に輸入されました。このため日本ではこのロールフィルムを「ブローニーサイズ」と呼ぶようになりました(和製英語)。


Six-20 Brownie model E
1947〜1957年生産のモデル

 


Brownie model Eのフィルム装填部分。
非常に簡素な構造になっている。

 

一方、1929年にドイツのフランケ&ハイデッケ社が「ローライ・フレックス」という世界初の二眼レフレックスカメラを発売し、世界的にヒットしました。これに使われていたフィルムが「117」や「120」でした。「120」フィルムは「ローライ・フレックス」のヒットにより世界中に普及します。


ROLLEIFLEX T
1958〜1976年生産

 

【4×5(シノゴ、フォーバイファイブ)】


HORSEMAN L45

 

4×5インチのシートフィルムで1枚1カットで撮影する大型カメラ用のフィルムです。
「4×5」は「35mm」と比較すればその面積は15倍近くになります。面積が大きければ相対的に鮮明な画像が得られますので、スタジオなどで商品撮影用として、また大型ポスターの撮影などで活躍しました。ただ、カメラが大きく機動性には欠けました。また最近ではデジタルカメラの画素数が多くなり、「4×5」の鮮明さに匹敵、あるいは上回るまでになったため、業務撮影の世界では使われなくなってしまいました。しかし、アマチュアの世界では逆に愛好者が増えているようで、大きなカメラを抱えて撮影旅行を楽しむ方もいらっしゃいます。

「4×5」フィルムをスキャニングすると大変に鮮明なデジタル画像を得ることが出来ます。ただし、「4×5」フィルムをスキャニングできるフィルム専用スキャナーは一般用としては現在市販されていません。(アスカネットでは業務用スキャナーでのスキャニングを承っております。別途ご相談下さい。)

 

【「リバーサル」と「ネガ」】
フィルムには各サイズに「リバーサル」と「ネガ」という2つの種類があります。

上がリバーサルフィルム、下がネガフィルム

(いずれも35mmフィルム)

 

・「リバーサル」フィルムは、別名「ポジ」フィルムとも呼ばれます。「ポジ」とはポジティブの略で、白は白に、黒は黒に、赤は赤色にと階調やカラーがそのまま写っているタイプのフィルムのことです。色に関してはリアルな色彩が得られるため、印刷を前提とした撮影の場合はリバーサルフィルムを使うのが一般的です。プロ、アマチュア愛好家の世界では多用されていましたが、デジタルカメラの普及により利用が激減しています。部屋を暗くして投影するスライド用フィルムはリバーサルに当たります。

 

・「ネガ」とはネガティブの略で、白は黒に、黒は白に、赤は緑色にと階調とカラーが反転しているタイプのフィルムです。ネガフィルムは写真としての最終仕上がりがプリントであることを前提としており、フィルム撮影段階では階調反転して記録されていることになります。「銀塩」と呼ばれる化学反応を用いた写真の記録方法では、ネガフィルムの方がラチチュード(露光寛容度;像として再現できる露光の範囲)が広いため、プリントの段階で明るさの調整が行いやすいメリットがあります。ネガフィルムもデジタルカメラの普及により利用が激減しています。

 

・スキャニングに対する適正について
フィルムについては、リバーサルでもネガでもスキャニングを行えますが、色、コントラストをフィルムに忠実になるように再現する、ということを踏まえるとリバーサルの方が判定がしやすいと言えます。ネガからのスキャニングではデジタル処理にて階調反転をさせますが、それが本来の色であるかどうかを正確に確認する術がありません。しかし一般的にはデジタル階調反転後に色とコントラストを調整することにより画像を作り込んでいきます。


それでは、またのご質問をお待ちしております。

 

 

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